「はな」について
鼻水が止まらない
「鼻水が出る」という症状は、実は、身体を健康に保つため・自分の身体を守るために重要な役割を持っています。「鼻水が出る」ということは決して悪いことではなく、鼻水が出ることは当たり前なのです。ただ、鼻水が出すぎること(医学用語で『鼻漏(びろう)』と呼びます)は何らかの病気から生じる場合があります。
「鼻水」の性質は大きく4種類に分けることができます。
① 水性
② 粘液性
③ 膿性
④ 血性
その性質により考えられる病気・状態も複数あります。
① 水っぽい水性
アレルギー性鼻炎、髄液漏
② 粘り気のある粘液性
慢性副鼻腔炎
③ ドロッした膿性
急性鼻炎、急性副鼻腔炎
④ 血が混じる血性
副鼻腔真菌症、鼻副鼻腔腫瘍・癌、多発性血管性肉芽腫症
普段何気なく思われているかもしれませんが、鼻水は身体の不調を教えてくれるバロメータの1つです。赤ちゃんやお子様は自分で症状の説明ができませんので、保護者の方々が日頃の鼻水の様子をしっかりチェックしてあげてください。
鼻水が多くて鼻の奥に溜まったり、鼻からのどに流れて気管に入ったりすると鼻水の中の細菌等が原因で、中耳炎や気管支炎、肺炎などを引き起こすこともあります。
鼻の奥まで鼻水を吸うことはとても大切なことです。ご自宅では「(お子様が)鼻吸引をさせてくれない」「どこまで吸引したらいいかわからない」という場合もあります。
「鼻水を吸ってもらうためだけに受診するなんて・・・」という方もいらっしゃいますが、そんなことはありません。鼻水の吸引処置だけでも耳鼻咽喉科を受診してください。
通院時に鼻水の状態や鼓膜の様子を観察することで病状を確認することも重要です。
十分鼻水をとってあげることでお子様は楽に鼻呼吸ができるようになり、保護者の方の心配も減るのではないでしょうか?
鼻が詰まる
鼻がつまる(医学用語で『鼻閉(びへい)』と呼びます)という症状はよくご経験のあることと思います。この鼻閉という症状を引き起こす病気は数多く存在します。一般的には鼻呼吸が十分にできない状態を鼻閉と言いますが、口呼吸しかできないという重度のものもあり、人により症状の程度は様々です。
鼻閉の原因は大きく分けて2種類で、それぞれ以下のような病気が関ってきます。
① 鼻の形態異常
鼻中隔弯曲症(びちゅうかくわんきょくしょう)
顔面骨折・鼻骨骨折
鞍鼻(あんび)
② 鼻粘膜の異常
急性鼻炎
アデノイド増殖症(幼少児の場合が多い)
アレルギー性鼻炎・花粉症
血管運動性鼻炎
鼻ポリープ(別名:鼻茸)
鼻腔内腫瘍
鼻副鼻腔癌
鼻閉は一体何が原因で起きているのか、どの病気なのかで治療法もかわってきます。そのため詳しい診察・検査を受けていただき、原因を突き止める必要があります。
鼻閉は日常生活に様々な悪影響を及ぼします。少しでも快適な日常生活をおくるために、鼻がスーッと通る環境づくり・健康を保つことは大切なことです。少しでも「鼻がつまるなぁ・・・。」と感じられた方は早めに受診をしてください。
鼻に血が混ざる
鼻血(医学用語では『鼻出血』と呼びます)はよく見られる症状ですが、何らかの病気・障害から生じている場合もあります。原因を探ることも大切ですが、鼻血が止まらない場合、まずは出血している部分を確認し止血する必要があります。
・出血している部位の具体例は以下のようなものです。
鼻腔の手前(キーゼルバッハと呼ばれる鼻出血がよくおこる部位。)
鼻腔の奥の方
鼻腔の粘膜全体
鼻出血にはいくつか原因があるため、自己判断で受診を先送りにされると隠れている病気に気づけない場合もあります。
例えば、お子様の顔にボールが当たって鼻出血が起こった場合、粘膜のダメージだけのこともありますが、同時に鼻骨骨折を起こしている可能性もあります。
日常生活において頻繁に鼻出血を起こすお子様は、血液や血管の病気を持っている可能性もあります。大人の方の場合は、それに加えて鼻副鼻腔の腫瘍や癌、多発性血管炎性肉芽腫症などの病気、内服薬の影響なども考えられます。
「鼻血で病院に行っていいの?」と考えられる方も多いですが、鼻出血の止血・診断は耳鼻咽喉科で扱うものの一つです。まずは応急処置としてご自身で鼻翼(小鼻のところ)の圧迫止血を試していただき、なかなか止まらない場合は必ず受診してください。
また、応急処置で止まっても度々出血する場合、原因特定のため受診いただくことをおすすめします。
ニオイを感じない
「においを感じない」「においを鈍く感じる」という症状がある患者さんは嗅覚障害の可能性が考えられます。その場合、まず障害の起こっている部位を特定することが必要です。
嗅覚障害を起こす部位は「鼻腔」「嗅細胞」「嗅球」「高次中枢」に分かれており、それによって考えられる病気が異なります。例えば、アレルギー性鼻炎で引き起こされる嗅覚障害は「鼻腔」が狭くなること、「嗅細胞」がトラブルを起こしていることなどが原因となります。また副鼻腔炎で嗅覚障害が引き起こされることもあります。
においを感じないということは皆さんもご経験があるかもしれませんが、例えると、風邪で鼻がつまるとにおいを感じないという状態と同じです。これは、においを感じる部分までにおい物質が届いていないからです。
当院ではにおいを感じないという症状の方の場合も下記のような問診をとって診療させていただいております。
嗅覚に異常を感じたのはいつからなのか?
その前に風邪をひいたりはしていなかったのか?
どれくらいの続いているのか?
他に鼻の不具合はないのか? (鼻水や鼻づまりの有無)
全くにおいを感じないのか?
ある特定のにおいは感じるのか? 識別できるのか?
(例:カレーやコーヒーのにおいだけ感じる。
においがあるのはわかるが何のにおいかわからない。など)
問診の後には診察を行い、必要に応じてアレルギー検査、副鼻腔レントゲン撮影などを行わせていただきます。
嗅覚障害は症状の経過も治療期間も長くなりがちな病気です。まずはあきらめず、根気よく治療を続けるてみることが大事です。少しでも嗅覚に異変を感じましたら耳鼻咽喉科での診療を受けてください。