「のど」について
せき(咳)やたん(痰)がでる
咳(せき)というのは、日常的によく見られる症状です。例えば、何かが喉(のど)に引っかかっただけでも咳は出ますし、風邪をひいたら咳が出ることもあります。
ひとまとめに咳といっても「続く長さ」で大きく3つの種類に分けられます。また、咳の性質として痰(たん)が絡む咳と絡まない咳にも分けられ、痰が出る場合はその色なども判断材料となります。これらの咳の見極めは持続期間、発熱・疼痛・痰の有無、症状の強さなどといった問診を中心に行わせていただきます。
・咳の続く期間で疑われる病気・状態
① 突発性・発作性の咳
咽頭異物、喉頭異物、気管内異物、気管内出血、喘息発作、気胸など
② 急性の咳(3週間以内に治まるもの)
咽頭炎、喉頭炎、気管支炎、肺炎、風邪、風邪に伴う喘息の悪化など
③ 遷延性の咳(3週間以上続くもの)・慢性の咳(8週間以上続くもの)
風邪、咳喘息、咳喘息、アトピー性咳嗽、喉頭アレルギー、気管支喘息、百日咳、結核、慢性気管支炎、
心因性咳嗽、薬剤性咳嗽(高血圧の薬であるACE阻害薬)、咽頭癌、喉頭癌、肺癌など
市販されているせき止めで対処するのも良いですが、咳が長く続く、程度がひどい場合などは必ず受診してください。
どこの科に行けばよいか迷う場合もありますが、まずは耳鼻咽喉科、内科、小児科のいずれかでご相談ください。
咳はわずらわしく、周囲にも気をつかってしまいます。少しでも早く原因を見つけ、治療法を見つけていきましょう。
耳鼻咽喉科はよく耳鼻科=「耳と鼻の専門医」と思われがちですが、咽喉科=「のど(咽喉)の専門医」でもあるので安心してご相談ください。
のどが乾く
のどの乾きは日常生活においてよく起こる症状です。空気の乾燥、食事の影響(味付けが濃い、ぱさぱさしていた)などからくる生理現象がそのほとんどです。
しかし、十分水分をとっても乾きが改善しない場合、何らかの病気が隠れている可能性があります。
のどが渇く原因には以下のようなものがあります。
① 体の水分が足ない場合(水分・食事がとれていない、発熱している など)
② のどに異常がある場合(唾液腺の異常 など)
③ 全身疾患がある場合(糖尿病やその他の代謝性疾患 など)
④ 精神に不調がある場合
⑤ 薬の影響がある場合(睡眠薬や鼻炎薬の内服 など)
のどの乾きを訴えて来院された方には、まずは問診を行い、持病や内服薬などの確認をさせていただきます。その後、視診を中心とした診察、必要な検査を行います。
唾液をつくる唾液腺も耳鼻咽喉科の専門分野ですので、唾液の量が減る病気について詳しく調べることもあります。具体的には唾液腺炎、唾石症、唾液腺腫瘍、シェーグレン症候群、IgG4関連疾患などです。
「のどが乾くだけで受診していいの?」と考えられる方もいらっしゃると思います。しかし、のどの乾きが病気のサインである場合もあります。のどの渇きが気になるようでしたら一度、来院されることをおすすめいたします。
のどに異物が詰まる
「のどに異物がつまる」ことは日常生活で割とよく起こりませんか? 例えば、急いで食事をしている時などにご経験があるかもしれません。食べ物などがつまった時、自然とつまりが取れることは多いですが、つまったような違和感や何か刺さっているような痛みが続くことがあります。そのような場合、のどのどこかに異物が残っていたり刺さっていたりすることもあり、病院などで除去処置を行う必要があります。
受診される方の中で最も多いのが魚の骨です。のどに異物がつまったり刺さったりした例のうち、半分以上は魚の骨と言っても過言ではありません。タイやサワラ、サバやタラなどの比較的大きな魚の骨が刺さって来院される方が多いですが、アジやイワシ、アユやサンマ、ウナギなどの小型の魚の骨が刺さって来院される方も意外と多いのが特徴です。
魚の骨以外では「甲殻類の殻」「鶏の小さな骨」「モチ」「茶の葉柄」などもつまりやすい食べ物です。また、食べ物以外でつまるものとして、「歯の詰め物」「玩具」「薬のシート」「小型電池」「小型磁石」などがあります。
気を付けながら食事ができる大人の方でもつまることは多いので、お子様やご年配の方がご家庭にいらっしゃる場合、より配慮が必要です。また、万が一のどに異物がつまった際は、無理に取ろうとすると逆に取りづらくなることもあります。よく言われているご飯の丸のみは悪化の原因となるのでしないで下さい。
自分でつまりを取ることができない場合には無理せず、処置を受けていただくことをおすすめします。
子どもがのどを痛がる
大人と子どもではかかる病気が違いますが、大人と同様に子どもものどの痛みや違和感を訴えることはよくあります。のどの痛みに関しては大人も子どもも咽頭炎によるものが多いですが、大人の場合と少し違うのはウイルス性の咽頭炎の比率が高くなることです。お子様がのどの違和感を訴えられた場合、いつもの風邪ではなくひどい咽頭炎をおこしている可能性もあります。
乳幼児ですと、当然のことながらのどの痛みを知らせることができません。そのため「夜泣きをする」「ぐずる」など不快感を伝える行為で異常を知らせてきます。
次のような、のどの違和感・痛みのサインで伝えてくれることもあります。
☆「口に指を入れようとする」 →のどが変だよ!何とかして!
☆「食事の量が少なくなる」 →飲み込むと痛いよ!もう食べたくない!
☆「よだれの量が増える」 →よだれ飲むのも痛い!飲み込まないで出します!
と訴えているのかもしれません。
幼児になると自分で「痛み」を訴えることはできるのですが、その表現はあいまいです。そのため、「これくらいなら大丈夫だろう・・・」と判断せずに、なるべく早く医師の診断を受けることが望ましいです。
お子さまは診察を嫌がる事もありますが、当院では子ども好きの熟練スタッフが処置のお手伝いをし、手早く診療を進めますので、安心して受診していただくことができます。
のどが痛い
耳鼻咽喉科を受診される方に特に多い症状が「のどが痛い」というものです。同じのどの痛みでも原因はたくさんあり、潜んでいる病気の種類も多くなります。病気によって痛みを感じる部位も変わってきます。
物理的な損傷(魚の骨が刺さる・切り傷がつく・粘膜がはがれる など)
化学的な損傷(薬品や有害ガスの吸入 など)
熱傷(熱すぎる・冷たすぎるものの摂取 など)
細菌やウイルスによる炎症
悪性腫瘍
神経痛
上記のように、のどに痛みを生じさせる要因は複数あります。また、のど自体ではなく、身体の他の部位に異常があるために痛みを感じる場合もあります。
のどの痛みに対してもまず問診から始めていきます。
いつから痛みがあるのか?
のどのどのあたりに痛みを感じるのか?
どのような痛みか?
発熱など他の症状はないのか?
過去に同じような痛みを感じたことはないか?
など詳しい状況を確認し、次に視診・触診などを行います。
診察の結果、必要であれば以下のような検査も進めていきます。
ウイルス・細菌迅速検査(インフルエンザウイルス、アデノウイルス、溶連菌など)
喉頭鏡検査
細菌培養・同定・薬剤感受性検査
電子ファイバースコープ検査
咽頭の炎症が強いときには扁桃周囲炎や扁桃周囲腫瘍、咽後膿瘍などになっている場合もあります。炎症が喉頭にまでひろがり急性喉頭蓋炎などになると、窒息の危険性も出てきます。そのように重度の炎症ではなくても、急性声帯炎、声帯ポリープ、良性腫瘍、咽頭癌、喉頭癌など詳しく調べる必要のある病気の可能性もあります。
のどは呼吸や食事に関わる大事な部分であり、同時に発声という重要な役割も持っています。のどに痛みを感じた際には少しでも早い受診をおすすめいたします。